Shin Takamatsu Architect and Associates Co.,Ltd. 株式会社高松伸建築設計事務所

  • Wooden City

手元に「京都市まちづくりセンター」が作成した資料がある。昨年実施された京町家に関する膨大な聞き取り調査をまとめたものだ。 それによると、京都市の上京、中京、下京、東山の都心四区内の木造建築37,769棟のうち、約85%がいわゆる「京町家」の姿をとどめているという。木造3万余という数字にも驚かされるが、そのほとんどが「京町家」とは。中には幕末の「蛤御門の変」の大火で大方が消失した江戸期のものも、ごく僅かだが立派に残存しているという。 耐震、耐火性能に関する不安や、住み手の高齢化による難儀のほどを時折り耳にする。他方、丁寧に手を加え、若手アーティストの工房として再生している例もある。ともあれ、前回もこの欄で触れたように、このまちは名実共に木造都市なのだ。 香り、ぬくもり、手触り、こんな木の風情や風合が、私達の生活から消えて久しい。木は息をしているという。古い木造建築の中にいると解るが、時折り木の鳴く鋭い音に驚く。そんな時、なるほど柱や梁は休むことなく呼吸し、ときに幾百年もの時間を生き抜いているのだと知る。 私達も生きものである。脆くてせつない生きものである。そんなけなげな私達が、日々の思いを寄せる建築にとって、ひそやかに生き続ける木という素材がふさわしくないはずがない。それに、ここは世界に冠たる木造のまち。ならばいっそのこと、少なくとも京都市内の建築の全てを木造で普請したらどうか。 市は「歴史博物館」を、かつて日本で造られた最も高い木造建築、高さ80メートルの「法勝寺」の復元で検討中と聞く。素晴らしい。私自身は、まず「市庁舎」を世界最大の木造建築で建造してはどうかと思っているのだが。 読売新聞2000年2月9日.(2000)

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