Shin Takamatsu Architect and Associates Co.,Ltd. 株式会社高松伸建築設計事務所

  • Young Korean

久々のソウルである。ユネスコ主催のシンポジウムと講演のための訪韓である。寒い。そしてあい変わらずの大渋滞。シンポジウムはともかく今回は講演が眼目である。開演1時間前に会場に到着する。スタッフは既に3時間も前から機材を持ち込んで働いている。備え付けの装備を私が決して信用しないからである。珍しく、抜けるように晴れている。その青空の下、なぜか会場周辺には若者達の群れ。それも並の数ではない。人気歌手のコンサートでもあるのかしらん。かきわけて楽屋に入る。今回のレクチャーもだいたいいつもと同じ趣向。前段はテンポの早い映画音楽に乗せてマシンガンのようにスライドを撃つ。ちなみに、音は「ラン・ローラ・ラン」「マトリックス」「恋する惑星」など。私は壇上に登らない。作品達が主役である。都合30分。大音響と光でぐったりしてもらう仕掛けだ。その後登壇し、最新の作品について話す。それもひどくゆっくりと。疲れをほぐしていただく。時に眠っていただいてもよい。最後にとっておきのCGアニメーションを3本たて続けに上映する。再び大音響。これに紛れて講師はかき消える。余韻だけが残る…という寸法である。が、この日は全てがとち狂った。まず観客が妙だ。ひと目で10代から20代前半。それも700席の会場にほぼその倍。そう、会場前にたむろしていた例の若者達だ。売券済みであるからして入場制限はできない。騒乱の中で始める。音とスライド・マシンガンが終る。彼らは疲れない。というより、まるでディスコにガソリンをぶちまけて火を放ったよう。私の話にも眠らない。爆笑と口笛の嵐。とうとうCGが終る。しかし、彼らは帰らない。通訳によれば、私を引きずり出せと息まいているという。覚悟して再び壇上ヘ。矢のような質問が飛んでくる。這々の体で答える。「なぜ建築家になったのか?」…「天命である。」。「なぜ作り続けるのか?」…「使命である。」。いきなり一人の少女が立つ。「あなたはなにを愛しているのか?」一瞬詰まる。が、答える。「自分…だね。」。歓声が弾ける。ここは若者達の国だ。 『しごとのデッサン』.共同通信.(1999)

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