Shin Takamatsu Architect and Associates Co.,Ltd. 株式会社高松伸建築設計事務所

京都大学宇治総合研究実験棟

工学系の実験研究施設が集中し、近年加速度的にその度合を深める京都大学宇治キャンパスでは、施設の細分化及び分断化と総合的・共同的な実験研究施設の不足が、各部門の将来をゆるがしかねない切迫した課題になりつつあった。この総合研究実験棟は、窮余の一策とは言えないまでも、そのような懸案をある意味一挙に払拭する意気込みで急拠建設が決定されたものである。従って設計作業は見切り発車状態をまぬがれず、各部門を代表する研究者達との協議を繰り返す中でプログラムそのものを案出推敲する過程を辿ることになった。とはいえ、そのプログラムに関しても、実施設計着手段階においてすら設計者が決定的な完成形を手にしたとは言い難い。従って、最終案はその逡巡をそっくりそのまま保留するかたちとなった。特に、平行する2棟の研究実験棟と、その中間をランダムな梯子状に連結する共同ゾーンによる構成は、如実にその未決定性を反映している。ところで、苦肉の策ではあるにしても、この留保の実体化は、ある意味この建築の能力を逆説的に保証することになったとも言えよう。即ちランダムネスによる不可測性の救出という能力である。設計者はプログラムの未熟に助けられつつ、建築の能力のある種の地平を拓いてしまったのかもしれない。

所在地
規模
敷地面積
建築面積
延床面積
竣工年
: 京都府 宇治市
: 地上5階
: 10,000m2
: 3,000m2
: 11,000m2
: 2004