Shin Takamatsu Architect and Associates Co.,Ltd. 株式会社高松伸建築設計事務所

近畿産業信用組合 難波支店

建築が何らかのイメージの構築を予め希求される時、建築家は言葉の連鎖のせせらぎに口を漱ぐ表現者と言えるのかもしれない。クライアントは「心」と「絆」を信条に、顧客への細やかな配慮を徹底する金融機関であり、従来の威圧的な金融機関の建築とは一線を画し、そうした企業精神に適応しい意匠が模索された。と同時に、大阪・御堂筋という立地上、企業の情報発信力としての象徴性を帯びた建築が否応なく要求された。つまり、金融機関としての主張と尊厳をその内に称えつつも、控えめで受容的な建築のイメージを求められたということである。とかく設計者は、この相反するイメージを建築へと現像を試みるのであるが、その現像液としては畢竟「言葉」しか許されていない。階層ごとに“明快”に機能を区分したシンプルな構成、“涼やか”で“上品”な竪格子が特徴的なバルコニー、“凛”として“スマート”に伸びるダブルスキンガラスウォール、“慎ましやか”に内部から覗く7本の“しとやか”な木質柱。これらの意匠は全て、イメージのジレンマの間を往還する中で、ポツポツと滲出る滴のような言葉に支えられるようにして導かれたものである。この滴の連続がせせらぎへと変わった時、“清楚”で“たおやかな”プロポーションを纏い、時の移ろいと共に“ひめやかさ”から“ひそやかさ”に姿を変える、まるで「和装の麗人」の如き建築が一挙に露光した。土地の言葉で“はんなり”と佇むこの建築は、道行く人々の心を慈しみで満たし続け、いつしか「和みの塔」と呼ばれている。

所在地
規模
敷地面積
建築面積
延床面積
竣工年
: 大阪府 大阪市
: 地下1階 地上13階
: 220m2
: 184m2
: 2,200m2
: 2010年