Shin Takamatsu Architect & Associates

 

市が市民ホールを建設することを決定し、我々はプログラムを論議する段階からプロジェクトへの参加を求められた。当初は地域の郷土芸能や音楽のための専用ホールが検討されたものの、結果として議論は一般的に多目的ホールと呼ばれるビルディング・タイプに収束することになった。とはいえ、いわゆる多目的ホールに確たる形式が存在している訳ではない。1960年代以後、地方都市で陸続と建設されたところの、極くありきたりの催しのどれもに過不足なく対応し得るホールのことを指すに過ぎない。つまるところ、特性を可能な限り捨象することによってこそ成立する、多目的とは名ばかりの、むしろ無目的という言葉こそがふさわしい集会施設であると言ってよい。設計は敢えてこの「無目的性」にこそ拘泥し、これを執拗なまでに強化するという戦略の元に展開した。従来の多目的ホールが、様々な目的に逐一追従するホールを模索するあまり、往々にして如何なる目的にも使用不能なホールに堕してしまうという事態をなんとしても避けたかったからである。結果、どのような目的に使おうとも、常に多大なエネルギーを必要とする真っ白なキャンバスの如きホールを設計することになった。無こそ有を生むと考えたからである。一種の逆説である。

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