Shin Takamatsu Architect & Associates

住居数80戸を収容する集合住宅である。敷地は京都市内のほぼ中央、京町屋が密集し、京都の風情を色濃く残す典型的な旧市街の一画であり、東西面は、それぞれ6メートル弱の、いわゆる小路に面している。計画は「京都に住む」をコンセプトに据えており、そうである限りにおいて、これ以上の敷地は望むべくもないと言っても過言ではない。とはいえ、その「京都」が設計を揺動し、熟慮を求め、しかる後導いた。法的な建築条件は極めて厳しいとはいえ、建設可能なヴォリュームは、町屋のスケールをはるかに超えるものである。かつ、風情の継承は、単に町屋の意匠を転写すればこと足りるわけではない。試行錯誤の末、各戸の連鎖による吸収的なファサードを考案し、その具体的な意匠に懐かしい連子格子を採用した。いわば、一種の都市的な「几帳」とでも言おうか。とまれ、京都の歴史的都市性を、なによりも吸収的であると読解した末のことである。エントランスと東西の小路を繋ぐ狭い通路は、通り庭や路地(ロージ)の仕組みを直接的に引用したものだ。

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