任期満了を目前にした市長が、最後の施策として子供達のための美術館建設を公約し、そのプログラムの立案から美術館完成までの全ての過程に従事することを求められた。かかる要請は設計者の通常の職能の域を超えるものではあるにしても、設計という職務の本来的な在り方を考える絶好の機会となった。議論百出のプロセスを辿ったものの、最終的に採択したプログラムはこれ以上無いほど明快である。主として創作ゾーンと展示収蔵ゾーン及びその中間の無目的ゾーンという3つのゾーンによるプログラムである。構成はこのゾーニングを実直に反映している。即ち3つのゾーンを単純に垂直に積層したものだ。無目的ゾーンとは物理的に他のふたつのゾーンに挟まれた空隙のことであり、上下ふたつのゾーンの相互干渉によって生じるであろう様々な要請を待ち受けるための第三の領域である。我々はそれを「待機する空間」と名付けた。
浜田市世界こども美術館
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