大蓮宮と同様、真言宗総本山東寺において「こころの建築展」と銘打った展覧会を開いた折に構想し、会場に展示した木造建築である。構造の理念は明快である。同断面の木材を一寸も欠き削ぐことになく相持ちで組み上げたものだ。高さは300尺(約91m)、使用木材料量は16,000石(約2,900㎥)である。ところで、名刹東寺には言わずと知れた五重塔が存在している。木造の塔では日本で最も高く(57m)かつ日本最古のものである。数々の地震を耐え抜いてきた構造は、我々の構想と原理的には同様のものだ。即ち、地震時、無数の相持ち部材の摩擦によって地震エネルギーが急速に減衰する。それはともかく、密教では塔を本尊・大日如来の似姿であるとしており、他ならぬその塔の威容と美しさが、構想にあたり、我々を徹底して鼓舞したのは言うまでもない。「大蓮宮」の名を賜わった東寺長者砂原秀遍和尚は、この塔をいみじくも「遍照塔」と命名した。「遍照」は「あまねく照らす」の意であり、かつ、他でもない「大日如来」を意味している。
遍照塔
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