日本で最大のシェアを誇る、飲料品製造会社の本社である。プログラムは極めて明快である。総員約500名が働くことになる総床面積20,000㎡の執務空間と、その業務以外の生活のための空間である。我々はそれら二種類の空間を構成する明快なシステムを構築するとともに、それらふたつのシステム間の差異を明確にするという手続きから設計に着手した。しかる後、システム間の齟齬を調停することを敢えて避けるとともに、むしろ齟齬を留保しつつゆるやかに機能的諸空間を編集するという作業に移行した。本社ビルという緊密に制度化された空間の中で営まれる日々において、時としてこぼれ落ちるやもしれぬ予期せぬ生活の諸相を、そのように積極的に温存されたところの、そのようないわば積極的な齟齬のシステムが救出すると考えたからである。かくの如く編成された弛緩した組織体を透明な皮膚がたおやかに覆っている。
キリン本社ビル
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