Shin Takamatsu Architect & Associates

その猥雑さに関する限り、日本においてこの建築の立地を凌ぐ場所はひとつとして無い。かかる立地における我々の使命は極めて明瞭であった。即ち企業を象徴する建築を構築するという使命である。ところで、ある特定の記号や指標でも用いない限り特定の企業をシンボライズすることなど不可能である。 ましてや建築は記号や指標からは最も遠い存在である。従って残された解法は理論的にただひとつ。建築が建築自身を象徴しなければならないという処方である。即ち立地の特性はもとより、それ自身のコンテクストとさえ無縁な孤絶性を開発し、これを建築においてひたすらかつ圧倒的に高めなければならないというわけだ。おそらくその孤高の強度の析出こそが、猥雑なる意味の坩堝にまみれつつ、建築という意味の器を擁立する唯一の方途である。

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