創業60年、材木業で起業したディベロッパーが、本社ビルを建て替えることになり、設計の打診を受けた。オーナーは地球環境の保全に関して独自の思想を有し、なによりも建築における木材利用の可能性を積極的に追求している。他方私達も永年大規模木造建築の研究と提案を続けており、ある意味で願ってもないタイムリーな依頼であった。従って、迷い無く木造の本社ビルを提案した。現行法規に照らす限り、実現にあたって様々な問題が生じることは百も承知であった。とはいえ、クライアントは案を見るなり即座に決断した。その後、調査と研究を積み重ねた末、最終的に1階を鉄筋コンクリート造、2階から最上階の5階までを木造ハイブリッド構造とする、言わば一種の混構造に帰着した。この構造法が日本初のものであることはもとより、なによりもこれが比肩すべきものの無い美しい躯体をもたらすことになるという確信が、我々をして最終案の実現へと導いたと言ってよい。ダブル・スキン・ガラスによる明澄なファサードは、ただひたすらにその美しさを引き立たせるべく採択したものだ。
丸美産業本社社屋
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