Shin Takamatsu Architect & Associates

国が土着の伝統芸能「組踊」を核として、沖縄はもとよりアジア太平洋地域における伝統文化を振興すべく、沖縄県浦添市に、全国で5番目となる国立劇場の建設を決定し、プロポーザル設計競技を経た末に我々が設計者として指名を受けることになった。「ゲニウス・ロキ」という言葉がある。「土地の精神」若しくは「地霊」を意味する。影ひとつない広漠たる建設地を訪れて以来、まるで島嶼の焦熱に煮詰められてしまったかの如く、その古い言葉が設計プロセスの煩悶にわだかまり続けた。ここではその古い言葉の残響に耳をすまし、その旋律に思考の脈動を委ねることにした。「他でもない沖縄の、なおかつ他でもないこの地に、土地の気脈のままにすっくりと立ち上がる建築とはなにか」「未だかつて目にしたこともなく、しかるに確かに見たに違いない始原の建築とはなにか」 そのかたちがここにある。避け難くある。思えば、古来芸能とは地霊との交信のかたち以外のなにものでもない。

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