Shin Takamatsu Architect & Associates

 

広州市が、副都心開発に先鞭をつけるプロジェクトとして、観客席数1800席の大ホール及び観客席数660席の小ホールを擁するオペラ・ハウスの建設を決定し、国際指名設計競技を実施することになり、我々にエントリーを求めた。競技主権者即ち市が作成した競技要項は、この建築を通じて自らの存在を世界に知らしめんとする市の並々ならぬ野心に満ち満ちており、主権者の脳裏に、あのシドニーのオペラ・ハウスが存在していることを知らしめて余りあるものであった。従って、参加建築家の全てが、世界に冠たる象徴的な建築の創造を夢見て意欲をたぎらせたのは想像に難くない。市は対岸に旧市街の絶景を望む、美河「珠江」通称パール・リバー河畔に敷地を定めており、これもまた、主催者があのシドニー湾を遠望していたに違いないと思わせるものであった。当然のことながら我々の提案は、この絶景に迷い無く徹底して拘泥した結果生まれたものだ。構成は直截である。大ホール及び小ホールを真珠貝(パール)を思わせるシェル構造で包み、これらを河川に直交する軸に則して対称に配置し、しかる後、広大なホワイエをパール・リバー前面へと開く扇状の大屋根で覆うというものである。即ち、この空間の全ては絶景ゆえに存在する。ある意味プラグマティックな作法によって生まれたところのこの雄壮な建築を、我々は絶景に名に因み「パール・オペラ」と命名した。

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