Shin Takamatsu Architect & Associates

2000年、台湾の台北市に事務所を開設して以来順調に設計依頼の受注が続いている。プロジェクトの大半は集合住宅であり、中でもこの「心見」は、これまででは最大規模のものである。クライアントは台中市に拠点を置く大手のディベロッパーであり、独得の事業戦略によって急成長を遂げつつある。そのクライアントが台中市中心部の一等地に用地を取得し、集合住宅の設計を我々に依頼することを決定した。ちなみに台湾において我々が設計した集合住宅は、セールス・プロモーションを開始するや、そのほとんどが即時完売であり、建築家「高松伸」の名はもはやブランドと化していると言っても過言ではない。当然のことながら、我々への設計の発注はそのような理由をおいて他にない。ところで、クライアントの要請は鮮烈なほど明快であった。即ち「全く新しいデザインの集合住宅」の創造である。これを受け、ひと月ほどの検討期間の後、クラシカルなアイデアから少なからず突出したアイデアまで計五案を提示した。プレゼンテーションの際、おそらくは中庸の案が採択されるであろうとの我々の予測は見事に裏切られることになった。クライアントは突出案を即決した。ゆるやかに傾斜したガラス面によってファサードを交互に編み込むという単純な手続きによって生まれたアイデアである。その単純さが豊かさを生成する。おそらくは刻々とうつろう都市の風景と時間をこそ身にまとって、この綾織りのタワーは都心に燦然と屹立することになる。

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