「国立劇場おきなわ」を施工中のさ中、劇場の敷地と対面する用地を所有する浦添市が、地元の産業活動を支援するための中核施設の建設を決定し、その設計依頼を受けることになった。プログラムは、展示ホール、各種研修室、会議室、研修ホール、商工会議所事務局などから成り立っており、地方の産業支援施設としてはそれほど特筆すべき内容ではない。とはいえ、市当局は隣地における劇場建設を絶好の機会と思い定めており、これを機に、劇場と本施設の一体化によって地元活性化のための様々な可能性を醸成する能力を有する施設の設計を求めた。とはいえ、市が策定したプログラムは、いたって標準的なものであり、かつ、国が運営する劇場のプログラムとの関連性は皆無と言って良い。従って、いわゆるソフト面を通じての建築的解法の追求は早々に断念した。一方、具体的諸条件、中でも劇場用地とぴったり同じ幅で向かい合う敷地の形状は極めて挑発的であり、我々はある意味この物理的な与件一点に拘泥した。その結果、劇場と全く同じ間口を有する平坦な建築を、可能な限り劇場から後退させつつ対峙させるという案を創出した。これによって施設前面に、施設前庭と劇場前庭による広大な空域が誕生することになる。あるときは野外芸能劇場として、またあるときは祭りの空間として、そしてまたあるときは全く予期せぬイベントの広場として使われるやもしれぬその相補的空白は、どちらか一方のプログラムでは決して生み出し得なかったものであることは確かである。
浦添市産業振興センター 結の街
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