大きくはふたつの主要部門を有する建築である。ひとつは映像と展示からなる「知のゾーン」であり、他のひとつはその企画展示を支えるためのコンテンツを市民がボランティアで製作するゾーン、言わば「創のゾーン」である。当然のことながら市はこれらふたつの部門の機能が相補的創発的に連動することを期待しつつも、一方で管轄上、行政上これらを明快に峻別することを求めた。これに対する設計者の応答は、プログラムの立体的転写と言って良いほど明瞭である。即ち、敷地の北面と西面をL字型のヴォリュームで完全に閉じ、これを「創のゾーン」とする。これによって南東に最大限の空域が開くことになる。その上空に「知のゾーン」を架構する。もとより空域がふたつのゾーンの区分を設定する。とはいえ設計者の主題は実のところこの空域にある。相互の機能が発動することによって露わになるであろう不可避の不可測性を受容し、新たなる経験への契機を受胎する言わば一種の蝕媒的なゾーンとして、この空域がたっぷりと働くであろうと考えたからである。この第三のゾーンは、後に奇しくも「情報ロビー」と名付けられることになった。
蒲郡情報ネットワークセンター・生命の海科学館
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