Shin Takamatsu Architect & Associates

クライアントからの要請は驚くべきことにわずか2点、それも極めて簡潔明瞭であった。第一に「社員は家族である。その家族が一体となる建築を実現すること」第二は「社員即ち家族の命を守る建築を実現すること」第一の課題はある意味抽象的である。これに応えるにあたり、我々は「ひとつの大きな家」なる概念を設定し、全階がほとんどワンルームリビングの如き平面計画と意匠を開発した。特筆すべきは窓面に装着した計748枚の木質回転ルーバーであろう。指一本で開閉角度を調節することによって光と影を制御し、ひとりひとりが自らの居場所をデザインすることが可能となる。第二の課題は極めて具体的である。先の東日本大震災の経験を踏まえ、最適化プログラムに基く耐震設計、耐震グリップ構法、防潮堤設置、備蓄スペースの合理化、全支店間通信機能維持のための自家発電設備など、最新の知見と技術を総動員してこれに応えた。 「命の家」……設計者の密かな命名である。

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