Shin Takamatsu Architect & Associates

阪神淡路大震災後、世界的な名声を誇るアンダーウェアのメーカーが本社ビルを再建することになった。クライアントは「限りなく純粋な建築」なるものを設計者に求めた。極めて抽象的な要請である。建築は抽象性とはおよそ無縁であるからしてこれは実に難題である。設計者はその難問に古典的な数理をもって応答した。黄金比である。かかる美学的、数学的かつ即物的命題によって、抽象と具象を一気に統合し得ると考えたからである。ところでこの黄金比の純粋立体は、その実大いなる多様性によって構築されている。およそ20種のガラスをテクノロジカルな分析に則してファサード全面に装着することによって、外部環境の変化に左右されることのない単一性の確保が試みられているからである。

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