Shin Takamatsu Architect & Associates

極めて挑戦的な学舎建設計画故に、当然のことながら設計者に示されたプログラムは精緻を極めたものであり、と同時に、果敢な試みゆえにこれまた当然のことながら未知への期待に満ちたものであった。これに応答するにあたり、設計者が敷設した戦略はこれ以上無いほど簡潔である。即ち、プログラムに徹頭徹尾追従しつつも、およそ厳密なプログラムの全てがそれゆえに避け難く包含してしまうことになるプログラムの不連続性を逆に強化する可能性を有する解を意図的に採択し、最終的にそれらを一挙に束ねるというものである。これによって生じる裂開が、不可測性を回収する能力を帯びるであろうと考えたからである。メインアプローチに不意にオーバーハングしたTIE棟、ウイングの結節部に押し込まれた図書館棟、唐突に屈曲するエントランスキャノピー、半ば散逸的な色彩計画等は、そのような目論見に則して抽出されたものだ。圧倒的に参照を欠いた名詞群、主語を忘却した統辞的構文の名残り、それが・・・というより、それだけがここに在る。意味は待つことによって自らを満たす。かかる能力を有するもののことを象徴という。

タイトル