Shin Takamatsu Architect & Associates

日本一の漁獲量を誇る境港市は、日本海に面する港町の中でも稀な、ロシアとの交易が行われている港湾都市のひとつである。とはいえ、このような民間活動を支援するための施設は全く未整備であった。市はこのような積年の課題と、年々盛んになりつつある交流を前に重い腰を上げ、支援施設を建設することを決定し、我々をその設計者として指名することになった。プログラムは、地方都市における例に洩れず、公共事業の総集編と言えなくもない。具体的には、来訪者宿泊施設、温泉施設、物産館、観光案内施設、ターミナル施設などによって成り立っている。もとより、かかる混成系のプログラムは、管轄も出資も異なる行政的区分に起因するところ大であり、従って、放置すれば自動的に分節的なゾーニングをそっくりそのまま反映してしまいかねないところを、我々は、極めて一意的なフォルムによって、半ば強引に統合することにした。用途や行政的明示を逐一救出するよりも、交易という歴史的運動の存在とそのダイナミズムを象徴的に屹立せしめることが、このプロジェクトにおける、設計者に課されたなによりも重要な使命であると考えたからである。

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