Shin Takamatsu Architect & Associates

1200年の歴史を有する京都には古くから「お茶屋」と呼ばれるところの、遊興と接客のための建築が存在している。一見なんの変哲も無い町家風のこの建築の特殊性は、その建築形式の全てが「お茶屋」の運営を支える様々なシステムによって余すところ無く決定されているというところにある。即ち、空間構成は事業に必要な人的資本を供給するべく連綿と維持され続けてきた下部組織の格式や儀礼に従い、間取りや調度のしつらえは接客の様式に従い、各部の寸法や詳細は歌舞音曲や作法に従うなど、設計者がそこになんらかの作為を持ち込む余地など全くない。加えて敷地は京都でも稀な歴史的町並みを有する通りに面した、間口6m奥行き13mという恐るべき狭さである。この難題が不可避的にある着想をもたらした。即ち、立体的なお茶屋である。結果、各部の意匠は所与のシステムに逐一従いつつ、これまでは水平に形式化されていた諸空間が垂直にねじれ上がるように延展する構成が誕生した。

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